コロナで病床ひっ迫のパリ。医療関係者の警告

パリ便り
2021年3月30日付ルモンド lemonde.frの画面。

医療関係者、ルモンド に寄稿

パリ公立病院に勤務する9人の医師が、3月28日付ルモンド に連名で寄稿し、集中治療室(ICU)がひっ迫し、患者の選別(トリアージ)を強いられると危機感を表明しました。

寄稿記事には、危機を乗り切るための3つの対応策と現状が記載されています。

1つは、パリ周辺の患者をフランスの他地域に移送する方法。これは、第一波で大規模に行われた方法で、当時は映像メディアでも大きく報道されました。しかし、今回の患者はこれまでに比べて重篤者が多く、移送できないこと。また、患者の家族が移送に同意しないケースも増えています。

次の手段は、これまでもたびたび報道されていますが、他の病気の手術を延期する方法です。しかし、これも限界です。

最後に残された手段は、患者を選別すること。誰もが回避したい手段です。

寄稿記事は、ICUに受け入れる患者の選別を強いられた場合、政府が迅速な対応をしなかった結果であり、「政府が責任をとるべき時が来た」と結んでいます。

フランスのコロナ対策


フランスは、去年の3月に完全ロックダウンを選択し、学校も閉鎖しました。その影響で、精神的不安定になった子どもが増加、オンライン授業の有無による学力差など子どもを取り巻く問題が噴出しました。経済界もロックダウンに猛反対でした。その結果、政府は、去年のようなロックダウンを回避する措置を模索し、1月に感染者数が増えてきた時、ロックダウンは選択しませんでした。経済紙レゼコーは、「マクロン大統領の判断は正しい」とする記事を掲載していました。3月に入って発表された措置は、ロックダウンと言う言葉とはほど遠い緩やかなものです。自宅から10キロ以内であれば自由に散歩ができて、6人以内であれば公園などで集まることもできます。

街を歩いて見たら、商店街のシャッターは閉まっていて人通りはやや少ないのですが、公園や遊歩道は通常より人出が多く見られます。

3月29日時点でロックダウンになっている19県でも学校全体は閉鎖していませんが、教育相は1人でも陽性者が出たクラスを閉鎖することを決めました。パリや近郊の複数の学校で学級閉鎖が出ていると伝えられています。

ワクチン接種が始まり、3月27日からは70歳以上が無料で接種を受けられるようになりました。ワクチンの効果で高齢患者減少しているとは言うものの、ワクチン接種は患者急増に追いついていません。患者が若年化し、病院は医療関係者が危惧していたように病床がひっ迫しています。

この責任を、政府がとるべきなのは当然です。一方で、2022年の仏大統領選を優位に運ぼうとする勢力がコロナを利用していないか、目を配るのも重要です。