フランスの情報・資料集「e-dico フランス」
リサーチをしながら拾い集めた情報を、短くまとめた電子フランス辞書(dico)です。このページは、原発に関するニュースやトピックスをまとめます。
Nucléaire 原発の寿命
原発の寿命延長を勧める専門家の報告書が公表されました。 これは、政府の委託によりフランスのエネルギー政策のあり方を調査していた専門家らの委員会(Energies 2050)がまとめたもので、 「ASN (仏原子力安全局)が認める限り、原発の寿命を延長ことがフランスにとって最善策」と結論付けています。
フランスには原発の寿命に関する規定はありませんが、ASNが10年ごとに安全についての検査を行っています。
報告書はまた、最も古い原発の段階的な廃炉を補うために次世代のEPR (欧州加圧型原子炉) の建設準備も勧めています。
(2012年2月13日 Les Echos)
委員会は4つのシナリオを想定して、コスト、電気代、CO2の放出量、雇用などを比較検討した結果、原発の寿命延長が最善と判断しました。 原発を推進する政府に有利な報告書になっています。
Nucléaire 原発事故とフランス
Nucléaire 福島原発事故の影響
フランスの原子力大手アレバは、国内のウラン加工工場のうち2つの施設
(la Comurhex Malvésiとle Tricastin)
の生産を2か月間停止します。これは、福島原発事故の影響で、日本からの注文が相次いでキャンセルになったためです。
生産を停止する間、従業員は研修を受けたり、休暇にあてたりする予定です。
アレバは、福島原発事故後に汚染水の処理などで東電に技術協力をしています。
(2011年9月15日 Le Monde)
Nucléaire 核施設の監査報告書公開へ
福島原発事故後、フランスの首相は、核施設の安全に関する監査(耐久調査)を原子力安全局(ASN)に命じました。最優先に指定された各施設から9月15日に報告書が提出されますが、エネルギー担当相は、これを一般公開する方針です。 ASNによると、調査対象となる150施設のうち、今回は58の原子炉を含む80施設からの報告書が提出され、残り70か所からは2012年の同時期までに提出される予定です。
12日に溶解炉が爆発した南仏マルクールの放射性廃棄物処理施設は、最優先に指定された80施設には入っていませんでした。
(2011年9月14日 ASN)
チェルノブイリ原発事故に関連する裁判
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故で、放射能に汚染された大気がフランスまで流れてきた可能性について、パリの控訴院は7日、フランスで確認された病気との因果関係を証明する科学的根拠がないとして、訴えを退けることを決めました。甲状腺の患者20人ほどが訴えていました。
一方、今年の夏、原発事故後にフランス東部やコルシカ島で甲状腺の患者が増えたとする調査も報告されていました。
(2011年9月7日 le Mondeより)
フランスのエネルギー政策
サルコジ大統領は、フランス北部のグラブリン(Gravelines)原子力発電所を訪問し、福島原発事故後もフランスの原子力政策に変更はないとの考えを強調しました。 TF1の20時ニュースが伝えた演説で、大統領は「反原発を訴える人は、電気代が4倍になることを伝える勇気がない」と述べていました。グラブリンは、6つの原子炉で、ヨーロッパ最大の電力を生産しており、電力の一部は、ベルギー、ドイツ、イギリス、ルクサンブルクに輸出されています。
一方、サルコジ大統領は、環境保護を訴えるNGOの求めに応じて、原子力関連のコストを明らかにするために、会計検査院による監査に同意しました。NGOのWWFは、15年前からの要求が初めて受け入れられ、原発の透明性につながると評価しています。
(2011年5月3日 TF1 journal de 20h、le Monde, le Parisienから抜粋)
廃炉を求めてハンガーストライキ
フランス東部のコルマールで18日、エコロジストの活動家が、反原発を訴えてハンガーストライキを始めました。フランスで最も古いFessenheim原発の廃炉と今後10年間に脱原発を実現するよう求めています。
一方、フィガロ紙に掲載されたフランス電力公社(EDF)のアンリ・プログリオ総裁のインタビューによると、「フランスのすべての原発の状態は良く」「Fessenheim原発は最も古いが、常に近代化している」ということです。
Fessenheim原発は、福島原発と同じ年に建設されました。
(2011年4月18日 le Monde電子版 « Nucléaire : des écologistes débutent une grève de la faim à Fessenheim » , le Figaro « Proglio : «Nos centrales sont en excellent état»)
原発事故のレベルについて
福島の原発事故がレベル7に引き上げられたことについて、フランスでは驚きの声が上がっています。
ルモンドの電子版は、フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)による報道発表で、「重大な事故だが、チェルノブイリの大惨事とは比較できない」と驚きを示したことを伝えています。
これまで、フランス核安全局(ASN)は、福島の事故をレベル6と位置付けています。
(2011年4月12日 le Monde 電子版 « Fukushima : rejets "significatifs" mais "pas comparables" à ceux de Tchernobyl, selon l'IRSN »)
フランスの地球化学者による見解
福島の原発事故を受けて、フランス科学アカデミーのメンバーで、地球化学者のクロード・アレグル (Claude Allègre)氏が、4月8日に « Faut-il avoir peur du nucléaire ? (原発を恐れるべきか)»と題する本を上梓しました。
朝のテレビ番組に出演した著者は、フランスの原発に不安はないと答えましたが、「世界中どこでも建設できるわけではない」と話し、なかでも地震が多く、「tsunami」という言葉が生まれた日本は、原発建設に適しているとは言えない。 原発は常に冷却するため水源近くに建設する必要があり、フランスはほどんどの原発が大きな川の流域にありますが、日本には十分な水量を確保できる川がないため海辺に建設している、など地理的な問題を指摘しました。
今回の事故の対処について、「東電の責任は重い」と述べ、海水による冷却の遅れ、当初、米仏の援助を拒否したことなどをあげています。日本政府は人命救助に尽力しており批判の対象ではないものの、東電の監視は甘かったと話していました。
(2011年4月8日 France 2 TELE MATIN « Les 4 VERITES »)
フランスの技術支援
サルコジ大統領の訪日に同行したフランスのエネルギー相らが具体的な支援の内容を協議するために滞在していますが、4月1日のパリジャン電子版は、フランス側は、「原子炉の現状把握が難しく、頭をかかえている」と伝えています。
このような状況において、エネルギー相は、情報収集にあたり強制的な印象を与えないように配慮しているそうです。
日本で技術支援をするフランスの原子力大手アレバの専門家らは、来週末には20人になり、これまでに培った専門知識をもって、特に、放射能に汚染された水の除去作業にあたる予定です。
(2011年4月1日 日刊紙パリジャン電子版Nucléaire : le casse-tête de l'aide française au Japon)
フランスのベッソン産業担当相は、ラジオRTLに出演し、東電からフランスの原子力庁(CEA)、電力公社(EDF)、原子力大手アレバに正式な支援要請があったことを明らかにしました。
また、テレビ局France 3の夜ニュースによると、支援要請のひとつは、日本側が一度断った、原発専門のロボットです。これは、チェルノブイリ原発事故の後、フランスが開発した原子炉内で人の代わりに作業ができるものです。
(2011年3月28日 ラジオ RTLとテレビ
フランス3 19/20 Edition National)
日本から輸入される食品の監視
放射能に汚染された食品がEU圏内に流通しないように、フランスは、日本産の生鮮食品のコントロールを強化するよう欧州委員会に求めています。
フランスは、すでに日本から輸入される魚介類の監視を強化しています。2010年に日本からフランスに輸入された生鮮食品と加工食品は8800トン、そのうち450トンは魚介類とペット用の餌です。
(2011年3月23日 Le Figaro電子版より)
日刊紙パリジャンの電子版によると、フランスは福島産の原乳やホウレンソウなどを輸入していません。
フランスの研究所によるデーター
フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)は、福島第一原発から放出された放射性物質を含む大気が3月23日か24日にフランス上空に達する見通しを発表しました。健康や環境への影響はないということです。
また、IRSNは、3月12日から大気中に拡散したとみられる放射性物質のシュミレーションをホームページで公開しています。
→福島周辺
→グローバル
(2011年3月19日IRSNの発表)
フランス人への避難勧告
福島第一原発での事故により、フランスの原発政策についての議論が高まっていますが、フィヨン首相は、
「今回の惨事から教訓を引き出し、安全性強化に生かす」と述べました。また、福島原発の深刻な事態に対し首相は、「首都圏のフランス人に対して、特別な事情がない場合は、フランスに帰国するか首都圏を離れて南下するように勧めた」と述べ、
通常は5000人のフランス人が首都圏に暮らしているところ、現在は2000人ほどに減っていることを明らかにしました。
(2011年3月15日 国民議会の質疑応答)
フランスは、アメリカに次ぐ原発大国です。日本は3番目。
Séisme フランスからも人道・技術支援
フランス外務省のホームページによりますと、東日本大震災の被災地への人道支援としてフランスは、毛布7000枚、水10万本、マスク100万個、保存用フルーツ5トン、粉末スープ5万個、消毒液10本、医薬品や医療品5トンを送ります。
また、福島第一原子力発電所に向けた技術援助として、フランス電力公社EDFや原子力大手アレバなどで構成している経済利益団体GIE Intraは、放射能防護用品や放射能測定器などを提供します。これらの支援物資は、22日にも空輸されます。
物資の分配は、すでに現地入りしているフランスの救援隊が行います。
(2011年3月21日フランス外務省のホームページ)
フランスはすでに、核分裂を抑えるためのホウ酸100トン、放射能防護服1万着などを日本に送っています。チェルノブイリ原発事故の教訓をもとに、フランスが独自に開発したロボットも支援物資の候補にあがっていましたが、今回の追加支援リストからは外れています。
日刊紙パリジャンの電子版によると、日本側が断ったということです。(→3月28日に東電がフランスに正式要請)
Sondage 世論調査
原発とフランス人
世論調査会社Ifopによりますと、フランス人の83%が、今後20年から30年後に、エネルギー源が風力、太陽光、バイオマスなどに置き換わり、原発の比重が大幅に減ることを望んでいます。
また、73%はそれが可能であると考えています。調査を依頼したFrance-soirは、原発が来年の大統領選挙の主要テーマになり、エネルギー問題が政治状況を一変すると分析しています。
(2011年4月5日 France-soir Centrales nucléaires : La grande peur des Français)